大阪大学感染症総合教育拠点
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生体反応シグナル学
Department of Molecular Biology and Biochemistry, Graduate School of Medicine, Osaka University
生体システムとしてのシグナル伝達の分子基盤の確立

私達ヒトを構成する多数の細胞には、接着や細胞外の情報(シグナル)により正しく応答する仕組みが備わっています。これを細胞内シグナル伝達機構とよび、この仕組みが破壊されることが、種々の疾患の発症原因になると考えられています。私達は、細胞の増殖や分化、運動、極性決定等におけるシグナル伝達機構の役割を明らかにすると共に、その異常に基づく疾患の原因を解明し、新しい診断法や治療法を開発することを目指しています。特に、Wntシグナルを中心に据えた研究を展開していますが、他のシグナル経路とのクロストークを視野にいれ、シグナル伝達機構を遺伝子型と表現型を繋ぐ「生体のシステム」としてとらえながら、生命科学や病態に関する新たな分子基盤の創出を行います。

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2025.05.08 医学系研究科からCiDERにHPを移動させました。
2025.04.28 セミナーご案内」5月12日に名古屋大学環境医学研究所 山中宏二先生によるセミナー『筋萎縮性側索硬化症(ALS)の分子病態解明に向けて -TDP-43病理の観点から』が開催されます。現地開催とリモート開催を行いますので、奮ってご参加下さい。
2025.04.17 助教の原田昭和の論文がNature Commun.に発表されました。本論文では、腫瘍環境、特に大腸がんにおいて多種類の線維芽細胞が存在する意義とその不均一性が維持される機構を解明しました。まず、正常大腸と炎症性腸疾患、大腸がんの3病態における線維芽細胞の一細胞RNA-seq(scRNA-seq)のメタ解析により、ヒト大腸線維芽細胞アトラスを構築しました。さらに、生物種横断的な解析から、ヒトアトラスにおけるサブタイプ分類を反映したマウスモデルの評価系を確立しました。これまでに、私共はβ-カテニン非依存性経路を活性化するWnt5aが大腸がん線維芽細胞の一部に発現し、腫瘍促進的に機能しうることを報告してきましたが、Wnt5aがどこで産生され、大腸がんの悪性化にどのように影響するのかは不明でした。本研究により、Wnt5aが腫瘍の大腸内腔側に近い線維芽細胞で発現し、Wnt5aをノックアウトするとマウスの大腸がん形成が抑制されることが明らかになりました。Wnt5aを発現する線維芽細胞サブタイプは、低酸素誘導性の炎症性線維芽細胞(InfFib)で、HIF2がWnt5aの転写を促進しました。さらにWnt5aは、血管内皮細胞からの可溶性VEGF受容体1(Flt1)分泌を介して血管新生を抑制し、InfFibを維持することによりさらに低酸素を誘導しました。InfFibはまた、大腸がんの増殖を促進するエピレグリンも産生しました。本研究により、Wnt5aが血管内皮細胞に作用して低酸素環境を誘導し、Wnt5aを発現するInfFibを維持することで、大腸がんを進行させることが示されました。
2025.04.01 医学系研究科からCiDERにHPを移動させました。
2025.03.04 Officeがテクノアライアンス棟から感染症センターに移動しました。
2025.02.17 セミナーご案内」藤田医科大学 腫瘍医学研究センター長 佐谷秀行先生によるセミナー『難治がん克服をめざして』が開催されました。
2024.12.17 セミナーご案内」微生物化学研究所 第三生物活性部長 畠山正則先生によるセミナー『胃がん発症におけるピロリ菌感染の多面的役割』が開催されました。
2024.08.08 助教の佐田遼太の論文がCancer Sci.に発表されました。本論文では、マウス抗ヒトCKAP4抗体(3F11-2B10)をもとに、ヒト化抗ヒトCKAP4抗体(Hv1Lt1)を作製しました。Hv1Lt1はCKAP4との親和性が3F11-2B10のそれよりも高く、DKK1とCKAP4の結合ならびにDKK1によるAKTの活性化を阻害しました。また、Hv1Lt1は膵がんマウスモデルにおいて、腫瘍増殖能阻害効果を示しました。さらに、Hv1Lt1投与により、腫瘍部へのCD8陽性T細胞の浸潤が増加しました。したがいまして、ヒト化抗ヒトCAKP4抗体Hv1Lt1は膵がん治療に応用できる可能性が示唆されました。
2024.07.01 松本真司が徳島大学医歯薬学研究部口腔生理学分野教授に就任しました。
2024.05.20 セミナーご案内」東京大学 医科学研究所教授 西村栄美先生によるセミナー『癌と老化への新たな挑戦:皮膚から見えてきたもの』が開催されました。
2024.04.01 ラボが医学系研究科基礎研究棟からテクノアライアンス棟に引っ越しました。
2023.11.16 セミナーご案内」北海道大学院 医歯学研究院教授 樋田京子先生によるセミナー『腫瘍血管の異常性とがんの悪政化』が開催されました。
2023.09.01 助教新沢康英の論文がOncogeneに発表されました。本論文では、TCGAデータベースに基づいてGREB1が悪性黒色腫で高発現していることを見出し、メラノサイト特異的転写因子MITFがその発現を誘導することを明らかにしました。しかも、MITFはGREB1遺伝子のexon 19の5‘側に結合し、GREB1のC端側半分(約1,000アミノ酸、isoform 4 (Is4))を発現しました。MITFとGREB1 Is4は悪性黒色腫89症例の20症例において共発現して、両タンパク質の発現は腫瘍深達度と相関しました。また、GREB1 Is4はピリミジン代謝の律速酵素であるCADと結合し、ピリミジン合成に必要でした。さらに、GREB1のアンチセンス核酸は悪性黒色種マウスモデルにおいて腫瘍増殖阻害効果を示しました。したがいまして、MITF依存性のGREB1 Is4の発現は悪性黒色腫の増殖を促進し、GREB1 Is4が悪性黒色腫治療のための新規標的分子になることが示唆されました。
2023.07.14 准教授の松本真司の論文がCancer Res.に発表されました。本論文では、肝細胞がんにおいてβ-カテニン依存性にGREB1が発現しその発現において肝臓のマスター転写因子であるHNF4αとFOXA2がGREB1遺伝子の上流50kb上流にTcf4とともにスーパーエンハンサーを形成していることを明らかにしました。肝細胞がん427症例の免疫染色解析の結果、β-カテニンの発現とGREB1の発現が相関していました。GREB1のノックダウンにより細胞増殖に関連する遺伝子の発現が減少し、in vitroとin vivoの実験系において肝がん細胞の増殖が阻害されました。さらに、GREB1アンチセンス核酸を肝がんマウスモデルに投与したところ、腫瘍増殖阻害効果が示されました。したがいまして、GREB1は肝細胞がん特異的なWntシグナルの標的遺伝子であり、Wntシグナル活性型肝細胞がんの治療標的となることが示唆されました。
2023.05.19 セミナーご案内」がん研究所 細胞老化研究部長 高橋暁子先生によるセミナー『老化細胞を標的としたがん克服への挑戦』が開催されました。
2023.03.31 大学院生名越章裕の論文がTrans. Lung Cancer Res.に発表されました。発がん促進分泌因子DKK1の細胞膜受容体であるCKAP4はエクソソームとともに細胞外に放出されることが知られています。本論文では、92症例の肺がん患者と性別、年齢をマッチさせた健常人の血清CKAP4値を測定したところ、肺がん患者血清で高値であり、手術後に減少することが明らかになりました。また、DKK1とCKAP4の両タンパク質が発現している症例は、他の症例よりも予後不良でした。さらに、肺がんマウスモデルに抗CKAP4抗体と第3世代EGFR阻害剤オシメルチニブを併用したところ、相加的な腫瘍増殖阻害効果を示しました。したがいまして、血清CKAP4値は抗CKAP4抗体による肺がん治療の際のコンパニオン診断として使用できる可能性が示唆されました。
2023.01.31 大学院生井口浩輔の論文がCancer Sci.に発表されました。本論文では、肝細胞がん412症例のDKK1とCKAP4の発現を免疫染色で解析したところ、13%の症例で共発現し、これらの症例では、ステージや血管浸潤、腫瘍数、腫瘍サイズが他の症例と比較して悪性度が高く、予後不良でした。また、肝細胞がんマウスモデルに抗CKAP4抗体と第3世代マルチキナーゼ阻害剤レンバチニブを併用したところ、相加的に腫瘍増殖阻害効果を示しました。以上の結果から、私共がこれまで報告してきた膵がんと肺がん、食道がんに加えて、肝細胞がんにおいても、DKK1-CKAP4がんシグナル軸が活性化されている症例は悪性度が高く、CKAP4が治療標的になることが示唆されました。
2022.11.28 セミナーご案内」愛知県がんセンター研究所 腫瘍制御学分野長 小根山千歳先生によるセミナー『がん原遺伝子Srcの再考―新規分子標的を求めてー』が開催されました。
2022.11.15
~11.19
Wnt 2022 EMBO Workshop. The Company of Biologists workshop and Yamada conferenceを菊池章がオーガナイザーとして淡路夢舞台で開催しました。
2022.06.27 セミナーご案内」帝京大学 先端総合研究機構教授 月田早智子先生によるセミナー『上皮バリアによる生体システム構築とその異常による病態』が開催されました。
2022.04.01 松本真司准教授が分子病態生化学教室のPIとなり、研究室の運営を行います。
原田昭和が助教に就任しました。
2022.03.31 博士課程学生の名越章裕が学位を取得して過程を修了しました。
特別研究学生の井口浩輔が学位を取得して過程を修了しました。
2022.03.31 菊池 章は定年退職して、4月1日から大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)で勤務します。
2022.03.30 菊池 章教授の最終講義は滞りなく終了いたしました。これまでお世話になりました全ての関係者の方々に、心からお礼を申し上げます。
2022.03.10 2022年3月29日に菊池章教授の最終講義が行われます。オンラインで配信いたしますので、ご興味のある方は、https://www.cresci-inc.jp/free_form/final_lecture.htmlから事前登録をお願い申し上げます。お申込みいただけますと、申込完了通知メールとともにZoom Webinarのリンクをお知らせいたします。
2022.02.10 セミナーご案内」に新しい情報が掲載されました。
2022年2月21日に大阪大学大学院医学系研究科 分子病態生化学 教授 菊池 章先生によるセミナー『Wntシグナル研究を基盤とした新規抗がん剤開発への挑戦』が開催されます(Web配信)。奮ってご参加ください。
2021.12.16 研究内容紹介」のページを更新しました。
「Wntシグナルと癌」に「膵癌におけるArl4cを介した新規転移機構の解明と、治療薬としてのArl4cアンチセンス核酸の動態とその効果」、「膵がんと食道がんにおけるDKK1-CKAP4-FOXM1シグナル軸を介した腫瘍増殖促進メカニズムの解析」を追加いたしました。
2021.12.08 研究業績」のページを更新しました。
2021.09.30 大学院生の原田昭和の論文がeLifeに採択されました。私共が新規のがん遺伝子として発見したArl4cは大腸がんや肺がん、肝がん等で悪性化に関わりますが、本論文では、Arl4cが膵がんの悪性化に関与することと、Arl4cを介した転移の新規分子機構を明らかにしました。膵がんは転移する頻度が高いがんですが、周囲に線維性組織(間質)が豊富に存在しています。転移するためには、この間質を壊しながら浸潤する必要があります。これまで、膵がん細胞が浸潤する際に、invadopodia(浸潤突起)が細胞腹側面に形成され、周囲組織を壊すことが示されてきました。しかし、Arl4cを多く発現する膵がん細胞では、invadopodia は認められず、代わりに細胞先導端にinvasive pseudopod(浸潤仮足)が突起構造を形成することが判明しました。Arl4cはその突起の先端に位置し、IQGAP1とMMP14をリクルートして、がん細胞周囲の組織を破壊しました。さらに、Arl4cを標的としたアンチセンス核酸(ASO)をマウス皮下に投与すると、膵がんの腸間膜リンパ節への転移が阻害されることを、マウスモデルを用いて明らかにしました。Arl4c ASOはArl4cを発現した膵がん細胞に特異的に集積することから、副作用の少ない治療薬として治療への応用が期待されます。
2021.09.17 セミナーご案内」に新しい情報が掲載されました。
2021年11月10日に国立がんセンター研究所 基礎腫瘍学ユニット 独立ユニット長 大木理恵子先生によるセミナー『発見後40年以上が経過した、最も有名ながん抑制遺伝子p53の新機能』が開催されます(Web開催)。奮ってご参加ください。
2021.05.24 助教の木村公一と佐田遼太の論文がOncogeneに採択されました。本論文では、発がん活性を有する分泌タンパク質Dickkopf1(DKK1)のがん細胞における過剰発現の分子機構を明らかにしました。DKK1はWntシグナルの標的分子であり、Wntシグナルの異常活性化しているがん細胞で高発現していますが、Wntシグナルが活性化していないがん細胞も高発現しています。私共は、DKK1の新規受容体としてCKAP4を同定して、DKK1-CKAP4シグナル軸の下流標的分子を探索していました。その過程で、転写因子FOXM1が膵がん細胞においてDKK1により発現誘導されることを見出しました。FOXM1は細胞周期の調節に必須の転写因子であり、種々のがんで高発現しています。興味深いことに、FOXM1がDKK1の5’側上流のエンハンサー領域に結合し、DKK1の発現を促進することも明らかになりました。また、ヒト膵がんと食道がん症例において、DKK1とFOXM1の両タンパク質が発現した症例は、他の症例に比べて予後が不良でした。これらの結果から、DKK1-CKAP4-FOXM1シグナルは、Wntシグナルの活性化していないがんにおいて、正のフィードバックループを形成し、がん細胞増殖を促進することが示唆されました。
2021.04.05 研究内容紹介」のページを更新しました。
「Wntシグナルと癌」に「肺腺癌におけるArl4c発現の臨床的意義とArl4cを標的としたアンチセンス核酸を用いた新規治療法の開発」を追加いたしました。
また、「II型膜タンパク質CKAP4の機能」に「パルミチン酸化CKAP4によるVDAC2を介したミトコンドリア機能の制御」を追加いたしました。
2021.04.01 セミナーご案内」に新しい情報が掲載されました。
2021年5月21日にWEB配信にて慶應義塾大学医学部 病理学教室 教授 金井弥栄先生によるセミナー『難病への挑戦:病理検体のゲノム・エピゲノム解析で見えるがんの本態: 個別化医療開発に向けて』が開催されます。奮ってご参加ください。
2021.03.31 准教授の山本英樹が滋慶医療科学大学教授として異動しました。
修士課程学生の瀬田みなみが学位を取得して、課程を修了しました。
大阪大学感染症総合教育拠点 生体反応シグナル学
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